介護に関わるすべての人を応援します

世帯分離とは│世帯分離を行うことのメリットや手続きについて解説

公的制度
世帯分離とは、同居したまま世帯だけを別々にする住民票上の手続きです。これを行うだけで、毎月の介護費用や保険料などを大きく減らすことができるケースもあります。本記事では、そんな世帯分離について、そのメリットやデメリット、実際の手続きの方法などについて解説します。
公開日
更新日

(1)世帯分離とは?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1564944

様々な必要性に応じ世帯メンバーを調整するための手続きのこと

「世帯分離」とは、文字通り、手続き上の必要性や家庭環境などに応じて、1つの世帯から1人ないしは複数人を分離させることを言います。

世帯や世帯主とは?

ここでの「世帯」とは、手続き上、同じ住居で同じ家計のもと暮らしている集団のことをいいます。

たとえば、祖父母、両親、子供の三世代が暮らしている家も、夫婦と子供だけの核家族も、独身者の一人暮らしも、どれもすべて同じ一世帯ということになります。

(※なお、独身者の一人暮らしの場合、本人が世帯主となります。「世帯主」とは、世帯ごとに作られる住民票上にて、家計を支えているとされる人物のことをいいます。)

ゆえに、たとえ同じ住居で生活をしていたとしても、家計が別々になっていれば世帯は別と考えることもできるわけです。このように、同じ家に暮らしながら世帯を分けることを「世帯分離」といいます。

一見複雑そうに見えるものの、世帯分離自体はシンプルな手続き

世帯分離の手続きはとても簡単で、役所に届け出をするだけで行うことができます。また、あくまでも住民票の登録上の問題なので、戸籍などにはいっさい影響がありません。

そのため、戸籍だけを変えることで何か得をすることがあるときは、あえてこの世帯分離を行う、といったケースもしばしば出てきます。

例えば、のちに詳しく説明していきますが、介護費用の節約のためにこの「世帯分離」をすることなどが挙げられます。介護サービスには多額の費用がかかります。特に、介護が長期化したりサービスの利用頻度が高まったりすると、それがもとで家計を圧迫することもあります。そのような家庭で、介護費用を節約することができる可能性のある方法として、この「世帯分離」が挙げられることがあります。

本記事では、そんな世帯分離に関して、メリットやデメリット、申請方法などに関して、詳しく説明していきます。

(2)世帯分離のメリット

介護費用の節約になる

まず、世帯分離を行うと、当然それぞれ一世帯あたりの所得が減ることになります。

この世帯所得は、各種介護費用を決める際の基準となっています。基本的には、所得が少なければ少ないほどその負担も軽くなります。

すなわち、世帯分離を行い、世帯所得を下げることで、介護サービスの自己負担額が軽くなり、介護費用を節約できる、ということが理論上可能になるのです。

たとえば、高額介護サービス費支給制度では、介護保険サービスの自己負担上限額が決められています。1ヵ月間でこれを超える料金を支払った場合、申請すれば払い戻しを受けることができます。世帯の所得が低ければ低いほど、自己負担限度額も低くなるので、その分払い戻しも多くなります。

また、介護サービス施設では、1日あたりの居住費と食費についても負担限度額がもうけられているため、かなり負担が軽くなることもあるのです。

保険料の節約になる可能性がある

世帯所得の高低は、保険料にも影響します。

たとえば、介護保険料の65歳以上の第1合被保険者は、住民税非課税世帯であれば年間保険料の負担が軽くなります。後期高齢者医療制度でも、均等割額については、世帯所得が少ないほど軽減割合が大きくなる仕組みです。

保険料は、基本的には支払い続けるタイプのコストであるため、この部分を節約するために世帯分離をしたい、と考える家庭は一定数存在する、と考えられます。

「ケースによっては世帯分離をするのみならず、分離して生まれた新たな世帯が生活保護を受給することもできるのでは?」と思った方は、以下の記事も併せてご覧ください。

→『生活保護受給のための世帯分離 | 可能なパターン2つと相談場所

(3)世帯分離をすることで、介護負担費用はどれくらい得になるのか

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1997129

実際に世帯分離をすることで、どれぐらいの節約になるのかを制度別に見てみましょう。

高額介護サービス費支給制度

介護サービスを利用する際には、1ヵ月間に支払う金額の上限が決められています。

たとえば住民税課税世帯の場合は、その上限額が44,400円です。一方、世帯員がすべて住民税を課税されていないと、上限額は24,600円まで引き下がります。

ここで、毎月の介護サービス費用がつねに44,400円を上回っている世帯があるとしましょう。この世帯が住民税非課税となる世帯を分離すると、それだけで介護サービス費が月24,600円まで安くなるというわけです。

その差額は、19,800円となり、年間にすると、237,600円も節約できることになります。

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費とは、住民税非課税の世帯に対して、介護保険施設の居住費用や食費を軽減してくれる制度です。

これらの費用には、世帯の収入によって4段階の負担限度額がもうけられています。

なかでも、もっとも低いのが「全員が住民税非課税で老年福祉年金を受給している」世帯です。それぞれの費用が、住民税課税世帯とくらべてどれぐらい安くなるか見てみましょう。

▼居住費
  -ユニット型個室 1,970円→820円
  -ユニット型個室的多床室 1,640円→490円
  -従来型個室(特養) 1,150円→320円
  -従来型個室(老健、療養) 1,640円→490円
  -多床室(特養) 840円→0円
  -多床室(老健、療養) 370円→0円
▼食費 1,380円→300円

居住費では、ユニット型個室やユニット型個室的多床室で、その差額が1,150円ともっとも大きくなります。これは、年間にすると419,750円にもなります。

さらに、食費の毎月1,080円の差額は、年間で394,200円になります。

つまり、居住費や食費がつねに負担限度額を超えるとすると、年間で最大80万円以上もの節約になるわけです。

(4)そもそも、介護保険による自己負担金上限とは?

介護保険による自己負担金上限について、さらに詳しく見てみましょう。

介護サービス利用料には、世帯の所得区分に応じて負担上限額が決められています。一ヵ月間でこれを上回る金額を支払った場合は、その差額を返還してもらうことができます。介護サービスの利用者が2人以上いる世帯は、利用料も合計します。

それぞれ、所得の段階区分と負担上限額は以下のようになっています。

現役並み所得者の世帯

世帯の負担上限額:44,000円

※65歳以上で課税所得145万円以上の被保険者がいて、なおかつ世帯の65歳以上の方の収入が合計520万円(単身者なら383万円)以上になる場合。

1人以上が住民税課税の世帯

世帯の負担上限額:44,000円

※65歳上の人すべてが利用者負担割合1割の場合は、年間上限額:446,400円

全員が住民税非課税の世帯

世帯の負担上限額:24,600円

※前年の合計所得額と公的年金収入額が合わせて年間80万円以下、あるいは老齢福祉年金受給者は、さらに個人の負担上限額:15,000円

生活保護受給者

個人の負担上限額:15,000円

自分の世帯がどれに当てはまるのか、よく確認しておきましょう。

(5)世帯分離をするデメリット1 国民健康保険料の負担額が増える可能性がある

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2174775

2世帯分を払わなくてはいけないため、国民健康保険の料金は増える

国民健康保険は、世帯ごとに保険料を支払う制度です。そのため、世帯分離を行うと保険料も2世帯分となってしまいます。その増加分が高すぎると、せっかく世帯分離してまで行った節約も意味がありません。

特に注意しておきたいのは、どちらの世帯にも高額所得者が残るケースです。

保険料は世帯所得に応じて高くなっていきますが、どこまでも高くなるわけではなく、一定の上限額が決められています。

たとえば、東京23区ではどれだけ収入が高くても、年間で最大930,000円までしか保険料を支払う必要はありません。

つまり、世帯分離でそれぞれに高額所得者が残ると、これまでの保険料930,000円はそのままに、さらに高い保険料を支払わなければいけなくなってしまうわけです。場合によっては、倍額となってしまうこともあるでしょう。

世帯分離を考えるさいには、このデメリットにも注意しておく必要があります。

(6)世帯分離をするデメリット2 勤務先の健康保険組合を利用したほうがよい場合

会社員が世帯主の場合、介護をしている家族を勤務先の健康保険組合に加入させる節約方法もあります。

国民健康保険とは異なり、社会保険では、扶養家族が何人増えても保険料は変わりません。また、その家族の国民健康保険料も支払う必要がなくなるので、これまで支払っていた保険料がまるまる浮くことになります。

ただし、ここで気をつけておきたいのが世帯分離です。

社会保険で扶養家族とするには、同じ世帯であることが条件となる場合があります。

具体的には、兄弟姉妹、伯叔父母、甥姪、孫とそれぞれの配偶者、また、義父母や義子などの関係がこれにあたります。これらの家族の扶養申請を行うときには、必ず住民票で同じ世帯であることを証明しなければいけません。

会社によっては、世帯分離をすることで家族手当からも外されることがあるので、注意が必要です。

世帯分離とどちらがより節約になるのか、あらかじめ確認しておきましょう。

(7)世帯分離をするデメリット3 複数の介護サービス利用者がいる場合、介護サービス利用の合算ができない

介護サービス費の負担上限額は、世帯ごとの利用料金が対象です。

世帯内に複数の利用者がいれば、それらもすべて合算することになります。つまり、利用者が多ければ多いほど介護サービスの負担上限額の料金が高くなり、その分だけ制度を利用するメリットも大きくなるというわけです。

ところが、世帯分離によって利用者がそれぞれ分かれると、一世帯あたりの利用料金は少なくなってしまいます。そのため、負担上限額を下回ったり、あるいは上回ってもこれまでより返還される金額が少なくなってしまいます。世帯分離で節約する際には、このデメリットにも注意が必要です。

現段階では利用者が一人しかいなくても、将来的に複数となることも十分に考えられます。その点もよく検討して、世帯分離を行いましょう。

(8)世帯分離の際の手続き・注意点

手続きの方法や持ち物など

世帯分離の手続きは、市区町村の住民課で行います。

世帯に所属している人であれば、誰でも申請することができます。それ以外の代理人を立てる際には、世帯員からの委任状が必要となります。

窓口に異動届が置かれているので、そこに必要な事項を記入して提出します。世帯から離れる人の名前は新世帯主欄に、もとの世帯主の名前は旧世帯主欄に記入しましょう。

本人確認書類には、運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、障害者手帳などを用意してください。顔写真がないものは、2つ持っていくようにします。

世帯主や保険証番号も変更されるので、世帯から離れる全員の国民保険被保険者証も必要です。印鑑については、認め印を持参すれば十分です。

注意点

節約の目的は説明しない

手続きの際に、世帯分離を行う理由を尋ねられることがあります。本来は節約が主旨の制度ではないので、正直に答えると受理されないケースもあります。あくまで、相談して生計を分けることになった、とだけ答えておきましょう。

夫婦の世帯分離は難しい

夫婦間でも世帯分離を行うことはできます。ただし、民法上ではあくまで夫婦は同居を前提とした関係となっています。そのため、生計がはっきり分かれていることを証明できないと、認めてもらえないケースもありえます。

被介護者は所得の少ない世帯に異動

世帯分離による節約は、世帯収入を減らすことで介護サービス費も減らす、という考えのものです。そのため、二人以上の所得者がいる場合、被介護者は収入の少ない側の世帯に属するようにします。

自治体のルールを確認する

自治体によっては、一度でも世帯分離すると二度と元に戻せなかったり、数年間は戻せなくなったりというルールを定めている場合もあります。事前に内容をよく調べて、慎重に行うようにしましょう。

(9)世帯分離に批判的な施設


出典:https://www.photo-ac.com/

世帯分離は、うまく活用すれば介護費用を大幅に減らすことができるメリットがあります。

しかし、これは裏を返せば、介護費用を受け取る側の介護施設側にとっては、とても大きなデメリットともなるものです。

というのも、世帯分離によって減った費用は、本来であれば介護施設の収入となるはずだったお金だからです。この減額分は、保険料によって補填されることもありません。

そのため、介護施設によっては、世帯分離していること自体を好ましく思わないところもあります。特に、介護を行っている家族が十分に豊かな生活を送っているように見えると、その思いも強くなることでしょう。世帯分離を行う際には、そのあたりにも配慮が必要です。

(10)保険制度や自分の世帯状況を定期的にチェックすることで、介護の負担を減らそう

世帯分離は、簡単な手続きを行うだけでできる介護費用の節約法です。特に、介護サービスの利用頻度が高い世帯にとっては、大きく減額できる可能性があります。

そのためにも、まずは自分の世帯の介護費用は毎月どれぐらいかかっているのか。それを世帯分離することで、どれぐらい減らすことができるのか。あらかじめ、きちんと計算しておくことが重要です。

介護保険制度の見直しは3年ごとに行われます。それ以外の年にも、一部変更が加えられることもあります。世帯状況の変化とも照らし合わせ、定期的にチェックをして、少しでも介護の負担を減らすようにしましょう。

この記事が気に入ったら
いいねしよう!