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【徹底解説】成年後見制度について | 仕組み、利用方法、メリット等

公的制度
成年後見制度は、認知症や精神疾患、障害などで判断力に不安がある方の法律行為を援助する制度です。任意後見制度・法定後見制度の二種類があります。任意後見制度は、判断能力が保たれているうちに後見人を決めておくものです。法定後見制度は判断力が弱い人を援助するものです。それぞれ、メリットデメリットがあり、知ったうえで利用することが重要です。
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(1)成年後見制度とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/740591

認知症の方や知的障害、精神障害を持った方は、判断力の低下によって日常生活にさまざまな困難を生じます。たとえば、必要な介護サービスや施設への入所の手続きなども、自分一人では行うことができない場合があります。ほかにも、悪質な訪問販売や詐欺の被害なども受けやすくなってしまいます。

そのような状態にある人の代わりに、身の回りのさまざまな契約や手続きを行うのが「成年後見制度」です。

成年後見制度の役割は、大きく分けて2つあります。

財産管理

財産管理は、支払いや受け取り、財産の処分、税務処理など金銭上の手助けをする役割です。

身上監護

もうひとつは、医療や介護、住居の契約など、生活上の手助けをする「身上監護」です。

ただし、その範囲はあくまで「法律行為」のみとなっています。食事や排せつの介助、病院への付き添いといった「事実行為」は、成年後見制度ではあつかいません。そちらは、介護サービスや医療サービスの手続きを行う、といった形でサポートすることになります。

法律行為を実行するために、成年後見人等には本人の代わりに契約を結ぶ代理権、契約のさいに同意をもとめられる同意権、契約の取消を行える取消権などがあたえられます。

なお、これらの事務は、家庭裁判所への原則年1回の報告などを通じ、その監督のもと行われることになります。

(2)制度を支える3つの理念

成年後見制度には、それを支える3つの基本理念があります。

ノーマライゼーション

ノーマライゼーションというのは、ハンデキャップのある人でも通常の人と同じように暮らすことができる社会作り、という意味です。成年後見制度もまた、本人がこれまでと変わらない生活を過ごすことができるような社会を実現する、という目的で設計されています。

自己決定権の尊重

成年後見制度は、あくまで日常生活は本人が自由に行うもの、という考えのもと作られています。そのため、できるだけ本人の意見を聞き、また同意を必要とするような制度となっています。

その考えから、日々の食事や衣類など日用品の購入については、同意や取消も認められていません。ほかにも、医療行為への同意、住居の移動、婚姻や離婚、遺言などの代理も行うことはできません。

身上配慮義務

身上配慮義務とは、本人の心身の状態や生活の状況についても配慮するべき、ということです。つまり、ただ財産の維持管理を行うだけではなく、本人の生活を維持向上させるために代理を行わなければいけない、ということです。

そのために必要な、医療や介護を受けられるようにサポートしなければいけません。

(3)成年後見制度の利用シーン

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1340969

成年後見制度は、具体的には次のような場面で利用されています。

老後の一人暮らし

高齢になると、複雑な契約などを一人で行うことが難しくなります。その結果、訪問販売で高額な商品を買ってしまうなど、悩みをかかえる人が数多くいます。

また、所有する不動産の経営や株の運用などの資産のあつかいに、不安をかかえる人もいます。このようなお金の管理に、成年後見制度は大いに役立ちます。

アルツハイマー病の診断

アルツハイマー病になると、判断力が徐々におとろえていきます。

そのため、診断された時点から、それにそなえておかなければいけません。また、すでに判断力がおとろえている場合には、住居を処分して老人ホームに入所するなどの手助けも必要です。

ほかにも、同居人が勝手に財産を使用することを防ぐといった目的もあります。

体が不自由

判断力があるにもかかわらず、出歩くこともできなくなるほどの要介護となると、自分の意思でお金を管理することが難しくなります。このような場合にも、預貯金の手続きなどで、成年後見制度のサポートを受けることができます。

また、交通事故で判断力を失った場合などには、本人の代わりに損害賠償を請求することもできます。

子供が重度の知的障害

子供が重度の知的障害を持っていると、親にとっては自分たちが亡くなったあとの不安が残ってしまいます。それを解消するためにも、成年後見制度は利用されます。

財産の不正使用を疑われる

家族が高齢者などのお金を管理をしていると、周囲から使い込みなどを疑われることがあります。このようなとき、成年後見制度の手続きを取れば、その公正さを証明することができます。

(4)成年後見制度① 任意後見制度

あらかじめ自分で後見人を指名し、委任することができる制度

任意後見制度では、まだ判断能力が保たれているうちに、今後にそなえてあらかじめ任意後見人を決めておく制度です。後見人には、家族や友人、知人、あるいは法律や資産の専門家など、信頼できる相手を自由に選ぶことができます。

任意後見契約では、財産管理や身上監護のうち、どのような法律行為をまかせるのかといった「委任事項」も具体的に決めることができます。

委任できない項目

ただし、身の回りの世話や介護などの事実行為、婚姻や遺言など本人の意思が重要とされる行為は、委任することができません。また、すべてに代理権をあたえたるという方法も認められません。

契約までの流れ

契約内容が決まったら、任意後見契約書を公証人役場で作成します。公証人による公正証書以外では契約が認められないので注意が必要です。

任意後見人に報酬が必要な場合は、その旨も契約書に盛り込んでおきます。その後、実際に判断能力の低下が見られたら、家庭裁判所に申立てを行います。事情聴取や判断能力の判定を行ったのち、任意後見監督人が選ばれます。

この段階で、契約が発効することになります。この任意後見監督人の監督のもと、後見人は契約にしたがって事務を行うことになります。

(5)成年後見制度の② 法定後見制度

法定後見制度は、すでに判断能力が低下している人を法律的に援助するための制度です。

その援助者には、サポートを受ける本人の判断能力に合わせて、「後見」、「保佐」、「補助」の3つの区分がもうけられています。それぞれ、どの範囲まで援助できるかにも違いがあります。

後見

本人の判断能力…つねに欠けている状態(日常生活も困難) あたえられる権利…財産に関する法律行為の幅広い代理権、日常生活に関する行為以外の取消権

保佐

本人の判断能力…著しく不十分な状態(重要な法律行為が困難) あたえられる権利…本人が単独で行った法律行為を有効にする同意権、日常生活に関する行為以外の取消権

補助

本人の判断能力…不十分な状態(一部の行為が困難)
あたえられる権利…なし

保佐と補助には、あらかじめ代理権があたえられません。ただし、民法に定められた法律行為のなかから、申立てを行って家庭裁判所が認めた代理権のみ持つことができます。

法定後見制度を利用するには、まず家庭裁判所へ申立てを行います。

本人はすでに判断力がおとろえているため、多くの場合は家族によって行われます。ほかに申立ができるのは、四親等内の親族、検察官、市区町村長などにかぎられます。

申立てには、申立書や診断書、戸籍謄本などの書類が必要となります。家庭裁判所はそれらをもとに審査を行い、また申立人や本人、援助者の候補者などを呼んで面接を行い事情を聞きます。まれに、精神鑑定も行われます。

これらの審理を経て、最終的にどのような援助が必要か、そして誰が援助者に適任か、といったことを審判します。多くの場合、申立書に記載された援助者がそのまま選ばれます。

しかし、親族間にトラブルがある場合や、遺産分割や不動産売買などの重大な法律行為が目的の場合、第三者の弁護士や司法書士等が選任されることもあります。そのさいの報酬についても、家庭裁判所が決めることになります。

(6)任意後見制度・法定後見制度 それぞれのメリット

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2343518

成年後見制度には、その種類ごとにそれぞれ次のようなメリットがあります。

任意後見制度のメリット

後見人を自由に選べる

任意後見制度では、自分がこの人にまかせたいと思う後見人を自由に選ぶことができます。

一方、法定後見制度では家庭裁判所が選任するため、希望通りの後見人とならない場合があります。

契約内容を細かく決められる

任意後見制度では、どの範囲までサポートを受けるのか、といった契約内容を細かく決めておきます。まだ判断能力が十分にあるため、より正確な希望を反映させることができるでしょう。

後見人の行動がチェックされる

任意後見制度では、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されます。任意後見人がしっかり事務を行っているかどうかがチェックされるため、安心してまかせることができます。

法定後見制度のメリット

中立性が高い

法定後見制度では、援助者を家庭裁判所が選任します。成年後見制度では、親族間での財産の流用などのトラブルも多くあります。

その点も考えて、第三者で中立性の高い弁護士や司法書士などが選ばれることもあります。

取消権がある

法定後見制度のうち、後見と保佐には取消権があたえられます。本人が単独で行った契約などをあとから無効にできるので、悪質な訪問販売や詐欺の被害などをふせぐのに役立ちます。任意後見制度には、この取消権がありません。

援助者の地位が確立される

法定後見制度で選任された援助者は、法務局でその地位が登記されます。公的に認められた立場となるので、財産管理なども人の目を気にせず堂々と行うことができるようになります。

(7)任意後見制度・法定後見制度 それぞれのデメリット

成年後見制度のデメリットとには、それぞれ以下のようなものが挙げられます。

任意後見制度のデメリット

死後の処理は委任できない

任意後見制度では、本人が亡くなった時点で契約もすべて終了となります。そのため、死後の財産管理や処分、葬儀や墓の手配などはまかせることができません。それらを依頼したいときには、別に財産管理委任契約を結んでおく必要があります。

開始時期の判断が難しい

任意後見制度では、本人の判断能力が低下したと判断された段階で、家庭裁判所に申立てを行います。しかし、本人と同居していない場合、どの段階でそれを行えばよいか判断が難しくなってしまいます。

任意後見監督人の報酬が必要 

任意後見制度では、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されます。この任意後見監督人に対しても、報酬を支払わなければいけません。報酬の金額も家庭裁判所が決めますが、だいたい一カ月に数万円程度となります。

法定後見制度のデメリット

資格や職業を失う

法定後見制度は、利用する時点で本人の判断力の低下が認められていることになります。したがって、保佐以上のサポートを受けると、会社役員や弁護士、医師、税理士、公務員といった高度な判断の必要な職業には就けなくなってしまいます。

手続きに時間がかかる

法定後見制度では、家庭裁判所による審理ののち制度が開始されます。そのため、すぐに利用したいと思っていても、ある程度の期間は待たなければいけません。近年は審理期間も短くなっていますが、それでも数ヶ月程度はかかってしまいます。

申立てを行うのに費用が必要

家庭裁判所に法定後見制度の申立を行うさいには、印紙代や切手代などで5,000円から1万円ほどの費用がかかります。

さらに、判断能力の鑑定が行われると、それにくわえて5万円から10万円ほどの費用が必要となる場合もあります。

(8)後見人になるためには

成年後見制度で後見人となるのに、必要な資格や条件はありません。申立てで希望さえすれば、基本的に誰でもなることができます。複数の後見人や、法人の後見人を希望することもできます。

ただし、法定後見制度では、民法によって次の5つの欠格事由が定められています。

  1. 未成年
  2. 家庭裁判所で法定代理人、保佐人、補助人を解任された人
  3. 破産している人
  4. 援助を受ける本人に対して訴訟を行っている人、その配偶者あるいは直系血族
  5. 行方が分からない人

このいずれかに当てはまる場合には、後見人や保佐人、補助人になることはできません。

また、希望したからといって、かならずしもなれるわけではありません。成年後見制度では、家族間や親族間のトラブルも多く見られます。それを避けるために、近年では、司法書士や弁護士、社会福祉士などの専門職後見人が選ばれるほうが多くなっています。

一方、任意後見監人についてはまったく制限はありません。本人が希望する人を契約書に記載すれば、そのまま後見人に選ぶことができます。

(9)後見人になる場合の注意点

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2303738

成年後見制度で後見人を選ぶ際には、以下のような点に気をつけましょう。

親族が後見人になる場合

成年後見制度の目的は、あくまで後見人の意思を尊重し、その生活の維持や向上をはかることにあります。決して、後見人が財産を自由に使えるわけではないことに注意してください。

たとえ親族であっても、見人の事務以外で財産を使用した場合は、業務上横領となる可能性もあります。

また、投資などの運用は財産を減らすリスクがあるため認められません。同じように、相続税対策として生前贈与を行うこともできません。貸付に関しても、たとえ家族や親族相手にも行ってはいけません。

これらの行為を本人が強く希望するときには、事前に家庭裁判所に相談してください。

また、本人の生活向上のためであっても、リフォームや自動車の購入など、多額の費用がかかる場合にも相談が必要となります。

親族が後見人となるときには、このような理解不足によってトラブルが起こることも少なくありません。後見人になる前に、まずはしっかり話し合いを行っておきましょう。

第三者が後見人になる場合

第三者が後見人の場合、本人と同居している家族との間でトラブルが起こりがちです。

たとえば、本人の生活費を請求する際にも、いちいち領収書の提示を行わなければいけません。提示を行った場合でも、支払いを断られるケースもありえます。

また、財産目録や後見等に関する記録も、たとえ家族や親族が希望しても断られれば見ることはできません。そのときは、家庭裁判所に閲覧や謄写の申請を行うしかありません。

このようなトラブルの多くは、親族と後見人の間でしっかりコミュニケーションが取れていないことに原因があります。すれ違いや不正をふせぐためにも、日頃からできるだけ意思疎通をはかるようにしましょう。

(10)成年後見制度を理解したうえで、利用してみよう

成年後見制度は、判断能力が衰えてしまった人の財産や生活を守るうえで、とても有効な手段です。

一方で、仕組みを理解していないと、財産の使い道などでトラブルも起こりやすくなります。それをふせぐ意味合いもあり、近年では親族以外の第三者が後見人として選任されるケースが多くなっています。

超高齢化社会を迎えるにあたって、一人暮らしの高齢者が増えると、ますますその重要性も高まっていくことでしょう。

将来や現在に不安をかかえている人は、ぜひ内容をよく知って、利用を考えてみてください。

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