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高齢者の嚥下機能が衰える3つの理由|誤嚥性肺炎の可能性・予防法等

セルフケア
嚥下機能とは、食べ物や水分を認知するとから、胃に運ばれるまでに使われるすべての器官の働きのことをいいます。嚥下機能は主に老化とともに衰えていき、食べ物が肺に入ってしまうことで誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。この記事では、嚥下機能低下のメカニズムからその予防法までわかりやすく説明しています。
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(1)嚥下(えんげ)機能とは

嚥下の段階によって機能が異なる

食べ物や水分を飲み込んで胃に送ることを嚥下(えんげ)と言います。嚥下機能とは、食べ物や水分を認知するところから始まり、胃に運ばれるまでに使われるすべての器官の働きのことで、正常な嚥下は3段階に分けて行われておりそれぞれ機能がことなります。

口腔期

食べ物や水分はまず、視覚や嗅覚、手などで認知され、どのように食べるかを判断します。食べ物が口に入ると唾液が分泌され、嚥下しやすい状態まで咀嚼(そしゃく)を繰り返します。飲み込こめる状態になった食べ物は、舌を上あごの奥に押し付けて咽頭に送ります。

咽頭期

咽頭から食道に食べ物を送る際に行われる動作は3つです。まず初めに、軟口蓋(なんこうがい)が動いて鼻腔と口腔の間を閉鎖し鼻への逆流を防ぎます。次に喉頭が上昇して声門を閉鎖。最後に喉頭蓋が倒れて気管の入り口をふさぎ、飲み込んだものの侵入を防ぎます。

食道期

飲み込んだ食べ物は食道の蠕動産んで王によって胃まで運ばれます。 ちなみに、嚥下機能が衰えてしまい、上手く飲み込むことができずに食べ物や水分が気管や肺に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)と言います。

(2)嚥下機能が衰える理由① 加齢

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1025466

加齢によって様々な部位の筋肉が衰えていくように、咀嚼する力や嚥下するために必要な筋力も衰えてしまいます。嚥下機能の低下は60代頃からみられることが多いですが、喉の筋力に関しては40代あたりから衰え始めると言われています。

また、加齢によって歯が抜けてしまうと咀嚼機能が急激に低下し、嚥下機能の低下が早くなってしまいます。

(3)嚥下機能が衰える理由② 運動麻痺や認知機能障害

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1983176

嚥下の際に機能する器官自体に問題はなく、器官を動かす筋肉や神経に問題が生じていると考えられるケースです。脳卒中などで倒れ、運動麻痺や認知症機能障害が残ると神経の異常や筋力・筋緊張低下といった症状で嚥下機能が衰えてしまうことがあります。

(4)嚥下機能が衰える理由③ 内服薬

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2316311

嚥下機能低下の原因として心理的原因も挙げられます。神経因性食欲不振や摂食障害、認知症、うつ病などの症状に悩まされている人に嚥下機能低下の症状が現れます。

症状が直接嚥下機能の低下を引き起こしているケースもありますが、精神科で処方される向精神薬や鎮痛剤といった薬剤の影響で、嚥下機能に使われる器官の働きが低下してしまうこともあります。

(5)嚥下機能の衰えが原因?嚥下障害とは 

食べ物や水分を飲み込むときには、口腔期・咽頭期・食道期に様々な器官が働いています。この中の器官が1つでもうまく機能しなくなると口の中のものを上手く飲み込むことができなくなり、嚥下機能障害を引き起こしてしまいます。

嚥下障害の症状

  1. 食べ物を噛んで飲み込むことができない

固形物を咀嚼して細かくし飲み込みやすい状態にすることや、喉や胃まで送り込む動作ができなくなります。そのため機能が弱っていても飲み込める緩い食べ物を好むようになります。

  1. 水分をとるとむせる

水分(固形物の混ざった味噌汁も含む)をとると、喉頭蓋の機能の衰えから気管へ入り込んでしまいむせることが多くなります。ひどくなると自分の唾液でもむせることもあります。

  1. 食事で疲れてしまう

嚥下機能が衰えてくると咀嚼を繰り返してもなかなか細かくならない、少しずつしか飲み込めないなど食事に時間がかかるようになります。すると食べるという動作に疲れてしまい、最後まで食べきれないことが多くなります。

  1. 食後に声がかすれるようになる

上手く食べ物を飲み込めることができずに口腔内に残っていると、痰が絡みやすくなって声がかすれる、がらがら声になるという症状が見られるようになります。

  1. 体重の減少

嚥下機能に障害が現れはじめると様々な症状を引き起こすため、食べる量はどんどん減っていくでしょう。そのため体重の減少も避けられない症状です。

この他にも口から物がこぼれる、食べ物が喉につかえる、口の中の汚れがひどくなるといった症状も嚥下障害が現れ始めているサインです。嚥下障害が悪化すると、脱水症状や栄養不良をはじめ、窒息、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。サインに気づいて嚥下障害を防ぎましょう。

(6)嚥下機能障害が引き起こす誤嚥性(ごえんせい)肺炎

嚥下機能が低下することにより、食べ物や水分を飲み込む際に誤って気管に入りこんだり、胃からの逆流物が入りこんだりしてしまいます。この時一緒に細菌が入り込んでしまうことで肺が炎症を起こし、肺炎を発症してしまいます。これを誤嚥性肺炎といいます。

日本では、がん、心疾患に次いで3番目に多い死因は肺炎です。その肺炎の中でも、誤嚥性肺炎によって死亡に至るケースは約7~8割と言われています。

(7)誤嚥性肺炎がおこるメカニズム 

加齢が進むにつれて口腔内を清潔に保つ力も弱くなり、口の中は肺炎に限らず様々な病気の原因となる細菌がより多く繁殖している状態となります。そこに嚥下機能障害によって誤嚥してしまうと、食べ物や水分と一緒に細菌が肺に入り込んでしまいます。

健康な身体であれば気管に食べ物や水分がはいってもむせることで排出されるほか、体力や免疫力があれば肺炎を発症することはありません。

しかし免疫力が低下している、体力のない高齢者や病人の身体では排出されずに残ってしまい、細菌が炎症をおこし肺炎=誤嚥性肺炎を引き起こしてしまいます。

(8)誤嚥性肺炎の症状 

肺炎にかかると、激しい咳込みや高熱、肺から雑音がして息苦しいといった症状が現れます。しかし誤嚥性肺炎ではこれらの症状がはっきりと現れないケースが多く、重症化してから初めて気づくことが多いようです。

(9)嚥下機能を鍛える方法

嚥下機能は鍛えることで機能低下の進行を遅く、または機能の回復効果が期待できます。

呼吸法

呼吸に使う筋肉を鍛えておくことで、喉に引っかかった食べ物や気管に入り込んだ異物を咳込んで排出できるようになります。

発声法

嚥下にかかわる器官を動かす訓練には発声トレーニングを行います。 口唇と舌の筋力は「パ」・「タ」と大きな声で発声することで鍛えられ、食道につながる喉の奥を動かすように「カ」を発音します。

食べ物を喉にスムーズに送る動きを鍛えるために「ラ」を発音し、繰り返して訓練することで嚥下機能改善効果が期待できます。

この他にも、頬を膨らませたりへこませたりして、意識的に口を動かすトレーニングや、首を回して筋肉をほぐす、喉仏の動きを意識して食べ物や水分を飲み込む、咳払いでトレーニングをするというのも効果的です。もし嚥下機能の低下が見え始め、トレーニングを行えない場合は交互嚥下トレーニングで効果が期待できることもあります。

ある程度の咀嚼をしないと口の中に残りやすい食べ物と、ゼリーなど咀嚼があまり必要ない食べ物を交互に食べることで、嚥下に使う器官に刺激を与え鍛えていきます。徐々に口に残りやすい食べ物もスムーズに飲み込めるようになるでしょう。

(10)嚥下機能障害を引き起こすリスクを下げよう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/92485

嚥下機能の低下を感じたら、まずは何が原因で障害が起きているのかを把握することが第一です。

運動麻痺や認知機能障害、内服薬が原因と考えられる場合は、病院での検査や通院リハビリ施設の利用をおすすめします。その原因が加齢と判断できる場合、これ以上症状が進行しないよう早めの対策がおすすめです。

身体のどの部位も鍛えていなければ衰える一方なのと同じように、嚥下に使われる器官は鍛えることで嚥下機能の低下を防ぐ、もしくは機能改善が見込めるでしょう。

嚥下機能障害が引き起こす誤嚥性肺炎は、死因の第3位にランクインしている肺炎の7割以上を占めるという恐ろしい症状です。嚥下機能を鍛えて機能障害・肺炎発症リスクを下げましょう。

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