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世帯分離のデメリットとは?|各種社会保険、年金への影響なども

介護制度
世帯分離とは、世帯を分けることによって世帯収入を減らし、介護費用を軽減するメリットがあります。しかし、世帯分離のデメリットもたくさんあります。たとえば、手続きが複雑になったり、負担上限額があがったりなどです。世帯分離を行うことによって、生じるデメリットを知った上で、世帯分離を検討していくことが重要です。
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(1)世帯分離とは


出典:https://www.photo-ac.com/

世態分離とは、誰かが1つの世帯から抜けることで、世帯が2つに分離すること

世帯分離とは、住民票に登録されている世帯を、2つ以上の世帯に分離することです。

たとえば、両親とその息子家族が同居しているような世帯の場合、両親と、息子家族の世帯を分けて住民登録を行います。住民票における世帯とは、「居住および生計を共にする集まり」と定義されているため、世帯分離の手続きを行えば、たとえ同居していても生計が別になる、という扱いを受け、別の世帯ということになります。

ただし、世帯分離をしたからといって、まったくの他人になるわけではなく、戸籍上の親子関係などに変化が起こるわけではありません。

また、世帯分離の手続きは居住している役所に届け出ることで可能になります。世帯分離は、要介護者を抱えている世帯にとってはさまざまななメリットもありますが、デメリットも存在します。

(2)世帯分離の特徴

世帯分離が注目されてるのは、何といっても介護費用を軽減できる可能性があるためです。

家族の中に介護が必要な人がいる場合、介護保険が適用される介護サービスを利用するケースが発生しますが、この利用料の自己負担額は世帯収入によって決定します。つまり、同一世帯の収入が多ければ利用料は高くなり、少なければ低くなるのです。

現在、世帯単位で公的負担を決める介護保険などについては、非課税世帯に対して負担を軽減するように配慮されているため、住民票上住民税の課税者を分離することで、この恩恵を受けることができます。

また、2000年以降、総務省の見解が変更されたことから同居の夫婦間でも世帯分離が可能になりました。

しかしながら、この手続きはハードルが高く、自治体によっては、一度世帯分離すると二度と元に戻せない場合や、一定期間の継続が必要な場合などがあるため、十分検討した上で慎重に行う必要があります。

(3)世帯分離するケース

要介護者本人の収入が少なく、その家族の収入が多い場合には、介護費用を軽減する目的で、世帯分離は有効な手段となります。世帯の中から収入の多い家族を分離することで、高額になる介護サービス費の基準が下がります。

たとえば、介護を受ける親の収入が国民保険のみで、同一世帯の息子の収入が高い場合には世帯分離が有効です。

一方、要介護者自身の収入が多い場合には世帯分離の効果はありません。そもそも、要介護者が介護費用を負担できれば、同一世帯の家族の負担が増加することはないため、世帯分離の必要がないのです。

(4)世帯分離のメリット


出典:https://www.pakutaso.com/

介護費用の負担が少なくなる

世帯分離のメリットはその目的でもあるように、家族の介護費用の負担が少なくなることです。

65歳以上の第1号被保険者については住民税の課税状況などに応じて保険料が数段階に分かれているため、世帯分離によって総所得が減少することで、介護保険料が軽減されます。

また、高額療養費についても、所得に応じた負担を求められるため、世帯分離で総所得が減れば、自己負担額が軽減されます。

そして、介護サービスを利用する際には、費用の一部を利用者が自己負担することになっていますが、これは「高額介護サービス制度」によって負担額の上限が定められているため、これを超えた場合には申請することで払い戻しが可能です。負担額の上限についても、世帯の所得によって変動があるため、世帯分離により所得が減少すれば、上限も下がることとなります。

さらに、医療機関への入院や介護施設への入所が必要になった場合でも、所得が減少することで、居住費や食費の負担限度額が大幅に軽減されることになるのです。

(5)世帯分離のデメリット① 手続きの複雑化


出典:https://www.photo-ac.com/

世帯分離をするためには、市町村の住民課に世帯分離届を提出する必要があります。世帯分離の申出が可能なのは、世帯分離をする世帯主か世帯員あるいは委任状を受けた代理人となります。

そして、世帯分離には、下記の書類が必要です。

  • 世帯から分離する人の異動届
  • 運転免許証やパスポートなどの届出をする人の本人確認書類
  • 届出をする人の印鑑
  • 分離される全員分の国民健康保険証
  • (申出を代理人に委任する場合)委任状

世帯分離の手続き自体はこれらの書類を提出することで完了しますが、いざ世帯分離をしてしまうと、世帯分離をした家族とは一緒に住んでいても世帯は別になるため、分離した家族の住民票などを取得する場合には、委任状を用意しなければならないなどのデメリットが発生します。

(6)世帯分離のデメリット② 要介護者が2人以上

世帯の中に、介護が必要な人が2人以上いる場合も、世帯分離によってデメリットが発生することがあります。

介護保険が適用される介護サービスでは、自己負担額が世帯収入によって決定するため世帯分離をすることでメリットがありますが、一方で同一世帯であれば2人の高額介護サービスの合算が可能だったものが別世帯となるため、結果として割高になるデメリットが発生します。

たとえば、高額介護サービス費の基準で、世帯全員が市町村民税非課税で、かつ老齢福祉年金を受給している利用者が同じ世帯に2人いる場合、世帯の負担上限額は月額24,600円ですが、世帯が別々になると、それぞれ負担上限額は月額15,000円(合計すると30,000円)となり、結果として割高になってしまいます。

(7)世帯分離のデメリット③ 国民健康保険が割高に

特定の料金項目の半額措置が受けられなくなることで、国民保険料が高くなる

現役世代であれば、医療機関を受診した際に医療費が3割の負担で済む健康保険などに加入しますが、これには労働時間や労働日数、労働する契約期間などの加入条件があります。

そのため、これらの条件が満たされない場合には、国民健康保険に加入することになります。

この国民健康保険の保険料は原則、収入を基に計算される「所得割」のほか、所得に関わらず世帯ごとに保険料を負担する「平等割」、世帯あたりの加入者数にあわせて保険料を負担する「均等割」といった料金項目が加算されます。つまり、世帯を分離すると、平等割をそれぞれの世帯で負担しなければならないというデメリットが発生するのです。

また、75歳となり、国民健康保険から後期高齢者医療保険へ移行した人がいる世帯を「特定世帯」といいますが、この場合は平等割で5年間半額に減額される特例措置があります。

しかし、世帯分離を行うと、この措置が受けられないというデメリットもあります。

このほかにも、国民健康保険は保険料の上限が定められていますが、世帯分離をすることによって、それぞれの世帯では上限を満たさなくなり、2つの世帯トータルでは保険料が高くなるというデメリットも考えられます。これらのデメリットを避けるため、世帯分離の際には、国民保険料を計算しておくことも必要です。

(8)世帯分離のデメリット④ 扶養手当がうけられない

企業ごとに定められている手当の中に、扶養手当があります。

これは、国のが定めた所得税の計算の際に、所得からある金額から一定の金額を差し引く扶養控除ではなく、国の就業規則に基づいて給与とともに支給されるものです。

 一般的には世帯の中に就労していない妻や子供がいる場合に支給されるものですが、企業によっては、一定額の年金収入に満たない父母と同居している場合にも支給されることがあります。ところが、世帯分離をしてしまうと、同一世帯とはみなされなくなり、扶養手当の対象外となる可能性があり、これも世帯分離のデメリットといえます。

 一方、国が定める扶養控除でも、家族を扶養していることで所得税の控除を申告することができたものが、世帯分離を行うと自治体によっては控除を受けられなくなることがあるため、こうしたデメリットも考慮しておかなくてはなりません。

(9)世帯分離による施設側のデメリット

世帯分離を行うことによってデメリットが発生するのは、介護する人を抱えている世帯だけではありません。

要介護者を受け入れる介護施設にとっても、世帯分離を行うことによって自己負担分が減少した利用者を受け入れるのは収入減に直結します。これは、世帯分離によって減った自己負担分が、保険ですべて埋め合わされるわけではないからです。

このため、施設側のデメリットも理解し、世帯分離に否定的な施設もあることを知っておかなくてはなりません。

(10)世帯分離の理解を深めよう


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介護サービスを受ける場合には世帯分離を行うことで介護費用の軽減できるケースがあります。

特に高額介護サービスを利用する場合などは、世帯分離によって負担額に大きな差が生じます。このため介護費用の軽減を考える場合に世帯分離はメリットのある一つの方法ですが、デメリットもあることを認識しておかなくてはなりません

また、メリット・デメリットはもちろんのこと、介護保険制度は定期的に見直しや改訂が行われるため、収入の状況や生活設計に照らしあわせながら、最新情報を常にチェックしておくことが大切です。

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