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障害者差別解消法とは|根本にあるモデルや背景、具体的事例を解説

社会問題
障害者差別解消法は、障害があっても住みやすい社会の実現を後押しする法律です。障害者差別解消法への理解はより良い地域社会の実現につながります。2008年に施行された障害者差別解消法の内容や具体例、およびその背景にある世界共通の「障害の社会モデル」や今後の地域課題について説明します。
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(1)障害者差別解消法とは

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2207139

障害者差別解消法は正式名称は「障害を理由とする差別の解消に関する法律」で平成25年6月に制定され平成28年4月1日より施行が開始されました。

その内容は

  • 「不当な差別取り扱いの禁止」
  • 「合理的配慮の提供」

の大きく二つに分けられます。障害者差別解消法は障害者基本法第4条にある「差別の禁止」の内容を具体化したものとして位置づけられています。

上記の「不当な差別取り扱いを禁止」することと「合理的配慮の提供」を義務化する内容のほか「差別解消を推進するための支援措置」について定められています。

(2)障害者差別解消法が制定された経緯

「障害者の権利に関する条約」への参画がきっかけ

2006年の国連総会にて「障害者の権利に関する条約」が採択されました。その条約の原則の一つに非差別が含まれています。

日本政府は2007年にその条約に署名し、2009年にはそれに伴う国内法の制定のため「障害者制度改革推進本部」を設置しました。障害者基本法の改正や障害者総合支援法の成立などと合わせて、被差別という原則の達成のため障害者の差別禁止部会での検討を重ね障害者差別解消法が制定されました。

障害者差別解消法は差別行為の禁止や社会的バリアを取り除くための合理的配慮をしなければならないという障害者基本法の第4条を具体化するための法律とも言えますが、その根本には「障害者の社会モデル」があります。

障害者の社会モデルとは

従来、障害とは手足の不自由や目が見えないなどその人の性質から生まれるものと捉えられていました。

つまり、障害を持っている人が社会で生きづらい状況は、「その人に障害があるから」であり、困難はその人や家族・親族が解消すべきと考えられていました。それは、「障害者の個人モデル」と呼ばれています。

しかし、今では「歩けないから」、「目が見えないから」といった理由で参加できない社会の仕組みから障害が生まれていると考えられています。

すなわち、今では機能障害がある人への配慮がない社会の仕組みに要因があるのだから、この仕組みの部分から改善をしていこう、という考え方が、この障害者差別解消法には反映されているということです。

障害に対する社会モデルが反映されている具体例として、どのような人も同じように使用できるようになされた設計である「ユニバーサルデザイン」というものがあります。

このユニバーサルデザインについて、より詳しい記事はこちら

→『身近なユニバーサルデザインの例|トイレやお金、信号機など

(3)障害者差別解消法が禁止している差別① 不当な差別的取り扱い

障害者差別解消法の禁止している差別の一つに「不当な差別的取り扱い」というものがあります。

これは機能障害などを理由に特定の人を区別したり排除したりすることが挙げられます。同様に、盲導犬などを連れている方の入店を一方的に断るなど、機能障害に関連する事柄で区別や排除を行うことも同様に禁止されています。

しかし、不当な差別的取り扱いとあるように、その差別などの行為がだれの目から見ても正当でやむを得ない場合は「不当な差別的取り扱い」に当てはまらないことがあります。

(4)障害者差別解消法が禁止している差別② 合理的配慮の不提供

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504437

もう一つの障害者差別解消法が定めているものには「合理的配慮の不提供の禁止」があります。

障害のある方が社会の中にあるバリアによって過ごしにくいと感じている場合があります。「合理的配慮の不提供の禁止」はその意思が伝わっているにもかかわらず国、都道府県、市町村、会社などが社会の中にあるバリアを取り除く対応をしなかった場合に当てはまります。

合理的配慮の提供のわかりやすい例としては車いすの人が利用できるように入り口にスロープを設置したり、広い席を用意したりすることが挙げられます。

しかしこれもサービス提供をする事業者などの状況を鑑み、変更・調整に大きな費用が掛かってしまう場合などは行わなくても差別にはなりません。

(5)障害者差別の具体的事例

障害者差別解消法が禁止している差別の具体的な事例をいくつか挙げてみると以下のようなものがあります。

  • 聴覚障害があるため通訳を頼み電話会社のサポートダイヤルに連絡したが、本人以外とはお話しできない決まりになっていると断られた。
  • いつも利用していたインターネットカフェが、精神障害があるとわかったとたん利用できなくなった。
  • 車いすでバスに乗ろうとした際に理由の説明なく対応できないの一言で乗車できなかった。

障害のある方がこのような差別を受けないためには、障害者差別禁止法がとても重要な役割を担っているといえます。

(6)問題が起きた時のシステム

相談窓口や司法機関などが主な受け皿

差別といってもどこからが不当な差別的扱いになるかなどは線引きが難しいこともあります。時には問題が発生し紛争や問題解決のために第三機関の介入が必要になるケースもあります。

そんな時にどこに相談すればよいのかというのはとても重要です。

障害者差別解消法では、今ある行政などの相談機関が相談先となっており、問題解決のために新しい機関を作ることはしていません。ただし、障害者差別に対する相談窓口として、「障害者差別解消支援協議会」を設置することが可能とされています。

実際、この障害者差別解消支援協議会を設置している自治体は数多くあります。この組織で、自治体の福祉局などに寄せられた相談事例に関する協議を中心に行い、問題の根本的な解決を目指すことを主な目的としています。

(参考:船橋市『船橋市障害者差別解消支援地域協議会(外部リンク)』)

行政の相談機関でも解決できない場合は、裁判所による裁判が必要となるケースもあります。

(7)障害者差別解消法の課題① 間接差別に関する対応

障害者差別解消法が制定され差別的扱いが禁止されても課題は残ります。

その課題の一つに間接差別というものがあります。間接差別は障害を理由にした異なる扱いを受けていなかったとしても結果的に違う扱いをされることです。

例えば英語のテストなどで、聴覚障害の人も参加できるがリスニングのテストを実施することで障害がない人と満点の点数が変わってしまうといったケースなどがあります。

(8)障害者差別解消法の課題② 相談機関の設置が任意である

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/344888

障害者差別解消法は、行政などの公的機関には相談及び紛争の防止等の体制の整備をすることを義務付けています。

しかし、相談機関としての障害者差別解消支援地域協議会の設置に関しては任意設置となっています。そのため、紛争などの問題解決のための機関が機能しないのではないかという不安や課題が残ります。

行政の窓口や裁判所は個別の問題解決の相談先としては機能するかもしれません。

しかし、障害がある人もない人も住みよい社会の実現を目指していくための、地域課題の解決や啓発活動等を担える相談機関が自分の住んでいる地域にないというのは不安を生じさせるため今後の課題といえます。

(9)福祉介護者が気を付けるべきこと

障害者差別解消法により、不当な差別的扱いや合理的配慮の不提供が禁止されました。それは障害がある人もない人も住みやすい社会の実現を目的に制定されています。そのような時代で福祉介護者が障害者とかかわる際に気を付けるべきことについて考えていきます。

まずはコミュニケーションの方法を工夫するなどの点が挙げられます。聴覚障害の方であれば、筆談などのツールを使えば本人の意思表示がわかりやすくなります。

視覚障害の方であれば音声でのやり取りが基本になるので話しやすい場所や話すスピードを心がけましょう。

知的障害の方であれば一度にたくさんのことを言われると混乱してしまう場合があります。短い言葉で一つ一つ質問したり、精神障害がある方には肯定的な言葉で穏やかに話すなど、一人一人の性質や状況に応じた対応を行うことが福祉介護者には求められるといえます。

その他身体的な機能障害を持つ方ではバリアフリー化を進めたり、段差などの移動に気を付けるなどの支援を行うことで当事者の世界はぐっと広がります。

(10)障害者差別解消法を知って、住みやすい社会を作ろう

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2100445

障害者差別解消法は障害者の差別をなくすために作られていますが、決して障害がある方を特別扱いする法律ではありません。その背景にあるのは「障害の社会モデル」です。

障害があっても住みやすい地域社会を作ることは障害がない人にとっても住みやすい社会の実現です。差別をしないようにというマイナスの見方ではなく、障害者差別への理解を深め、どうすればすべての人が快適に過ごせる生活環境を作ることができるのかという前向きな捉え方をすることでよりよい社会の実現を目指していきましょう。

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