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政府の基本方針から見る、これからの介護保険制度と介護報酬の方向性

公的制度
これからますます需要が拡大することが明らかにもかかわらず、今後どうなっていくのか予測がしにくい介護業界。 背景には社会保障費の縮小と介護職の処遇改善という、相反する問題が内在している点にあるのではないでしょうか。 両立は困難ともいえる二つの問題に、政府はどのような方針を出して取り組んでいるのでしょう。 今回は政府が掲げるプライマリーバランスゼロと介護業界に与える影響について解説します。  
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(1)プライマリーバランスゼロを目指すには社会保障費の削減が絶対条件

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1889668

平成28年度の国の予算は歳入57.8兆円に対し、歳出が96.7兆円(一般会計のみ)。単純計算して毎年38.9兆円の赤字が生まれている計算です。 このうち介護や医療といった社会保障費には歳出の33.1%に当たる31.9兆円があてられています。

この数字をみれば一目瞭然ですが、 国の財政における社会保障費の負担は非常に重いものとなっています。

財政健全化、ひいてはプライマリーバランスゼロ(政府予算の収入と支出がプラスマイナスゼロになること)を目指すにあたって、社会保障費の削減は避けては通れない問題でしょう。

口で言うのは簡単ですが、実現には困難が伴います。

まず第一に社会保障を必要とする高齢者層が、これからますます増えていくこと。

団塊の世代が75歳以上を迎える2025年には1億2,000万人の総人口のうち、65歳以上の人口が約30%に当たる3,600万人になると予測されています。

高齢者が増えればそれだけ介護を必要とする人も増えるわけで、2025年の要介護者は2015年の約1,600万人から約2,200万人へと急増すると見込まれます。

介護が必要な人は増えるのに介護にかかる費用は軽減する-そんなことが本当に可能なのでしょうか。

(2)どうやって社会保障費を削減していく?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/7521

すでに社会保障費を削減するための取り組みは始まっています。2015年に介護報酬が改訂され、全体でマイナス2.27%の引き下げとなったことは記憶に新しいでしょう。

今後も介護報酬を引き下げていくことは十分に考えられることです。とはいえ報酬の引き下げは介護職の給与削減にもつながりかねません。介護職の給与が減れば、介護を仕事にする人は今以上に減ってしまうでしょうし、今後ますます必要とされる介護職の確保が困難になってしまいます。

そうした問題に対処するために、 キャリアパス制度を整備している事業所は報酬を引き上げ、そうでない事業所は引き下げるといった取り組みも同時に行っています。

こうすることで費用を削減しつつ、介護を魅力的な仕事となるような仕組みを整備するという意図があります。

もちろんこれだけでは十分ではありません。介護を受ける人の環境も、今後は大きく変わっていくでしょう。

ポイントは、「施設から在宅へ」です。 2015年の介護保険の見直しには、報酬の引き下げ以外にも大きな変更点がありました。その一つに「施設に入居できるのは要介護3以上のものに限られる」という点があります。

これによって介護度の低い人は可能な限り在宅で見るという、これまでの方針がより強固になりました。本当に介護が必要な人に施設での介護を集中させ、 軽度の人は地域全体でみていく流れは、これからますます顕著になっていくことでしょう。

一方で限られた介護力を重度の人に集中させるとなると、問題も生じてきます。それは軽度の人が利用できるサービスが減ってしまう可能性です。

これまでのように要支援や要介護1・2の人が気軽に使えるような介護保険サービスは少なくなってくるかもしれません。そうなると生活に支障が出る人も増えてくるでしょう。 介護保険を利用して適切なサービスを受けることで保たれていたADLやQOLが低下し、介護度の悪化が進む可能性も考えられます。

そうなってしまうと社会保障費はむしろ増大してしまい、政府の目論見は大きく外れてしまいます。 そうならないために注目されているのが、「介護保険外サービス」です。

介護保険外サービスとはその名の通り、介護保険を使わずに利用するサービスのこと。 保険を使いませんから、当然国の財政には影響を与えません。代表的なものに配食サービスや家事代行サービスなどが挙げられます。他にも新聞配達員が行う見回りサービスや要支援未満の人を対象とするような予防的ケアを提供するサービスなども保険外サービスに含まれるでしょう。

保険外サービスの最大のメリットは、保険内サービスのように規則に縛られることなく自由な発想で、その人が本当に必要としているものを提供できること。今後はこれまで以上に多様な保険外サービスが登場するでしょうし、それによってこれまで保険内サービスで賄われていた部分の多くが、代替されることになるかもしれません。

(3)社会保障費の削減による介護士への影響は?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1504436

社会保障費は今後削減の方向に進んでいくことは間違いないでしょう。そうなると問題になってくるのが、介護士の給与です。

保険内サービスを提供する事業所の職員の給与は、財源を国に拠っています。そのためいくら介護士の処遇改善を唱えていても、 全体のパイが少なくなるのですからその煽りを受けることは想像に難くありません。

そんな中で影響を受けにくいのは、保険外サービスを提供して成功している事業所です。同じ介護士でも介護保険内サービスのみ提供しているのか、 保険外サービスも提供しているのかによって、大きな給与格差が生まれそうです。

保険外サービスの拡大に伴い、今後介護職員が活躍する場は多様化すると予想されます。

例えば旅行やアミューズメント、食など、「介護×◯◯」のサービス領域で、 高いサービス能力と介護スキルを兼ね合わせた人材へのニーズが高まります。

介護職員といえども、介護を超えた知識や経験、専門性が求められる時代になると言えるでしょう。

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