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介護ロボットアレルギーはなぜ起こる?人の役割。ロボットの役割

テクノロジー
介護士不足の問題はいまや非常に深刻になっています。 介護業界の人材不足を解消するために、政府もさまざまな取り組みを行っています。その一つが厚生労働省による介護ロボット導入支援特別事業。介護ロボットを導入しようという事業所のために、補助金を出すことで介護ロボットの普及と介護士不足の問題を解決しようという取り組みです。 国の後押しもあって既にロボットの導入が進んでいる事業所もありますが、介護現場で働く人の反対意見も少なからずあり、国が思うようなスピード感で進んでいないのが現状です。 介護現場ではどういった思いがあり、否定的な意見にはどういった理由があるのか。それらを掘り下げて見ていき、介護ロボットと介護業界の未来について考えていきます。
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(1)なぜ介護職はやめてしまうのか?

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/2019679

介護ロボットについて考える前に、そもそもなぜ介護職の離職率は高いのかを考えてみることにしましょう。介護業界の離職理由として最も多いのが、職場の人間関係。

利用者だけでなく職員とも毎日密にコミュニケーションを取ることが求められる介護の仕事。精神的なストレスや気疲れが仕事を離れる原因となっています。

精神的な疲労も代表的な理由の一つです。認知症高齢者とのコミュニケーションは経験したことのない人が想像する以上に大変なものです。

介護はよく「きつい・汚い・臭い」の3Kと言われることがありますが、実際には身体的負担よりも心理的負担で辞める人の方が圧倒的です。

もちろん心理的な負担だけが理由ではありません。介護士の職業病とも言える腰痛によって仕事を辞める人、排泄処理に耐えられずに辞める人も少なからず存在します。 また、給与面の低さを理由に転職する人も後を絶ちません。

実際にはこれらの理由が複雑に絡み合っており、どれか一つに原因を特定することは難しいものです。逆に言えばこれらの問題のうちの一つか二つでも、介護ロボットの導入によって解消するのであれば、 それだけ離職率が低下する可能性も秘めているのではないでしょうか。

(2)進化する介護ロボット

このような状況を踏まえて、現在開発されている数々の介護ロボットはどのような役割を果たせるのでしょうか。

IT技術の発達により、介護ロボット分野も大きく発展してきました。以前は介護ロボットといえば見守り型が主流でしたが、最近では介護士の仕事を代替するようなロボットも数多く登場してきています。

株式会社菊池製作所が開発した介護用マッスルスーツは、介護士の介助動作を補助する目的で作られています。

抱えての移乗動作や立ち上がり動作の補助など、 ボディメカニクスを活用した上でなおかつ介護士の力が求められる場面で、介護士の負担を軽減するのが目的です。

排泄処理は介護の中でも心理的負担が大きい場面。介助する側にとってもされる側にとってもデリケートな問題です。

自動ラップ式排泄処理システム(日本セーフティー株式会社)はこうした問題を解決するために開発された製品です。

ポータブルトイレ使用時に一番気になる臭いや汚物の処理といった問題を自動で処理してくれますから、排泄介助の負担が大きく軽減されるでしょう。

コミュニケーション型ロボットは、介護ロボットの中でも比較的導入が進んでいる分野です。

ソフトバンクのPepper はその代表的な存在でしょう。 これまでのロボットでは困難だった会話能力の向上や、レクリエーション機能の向上などで、ロボットに介護士の代わりができる可能性を垣間見せてくれています。

(3)ロボット導入はなぜ進まないか?現場で働く介護士の思い

出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1826430

このように介護士の負担を軽減するロボットは数多く登場しています。ですが現実には介護ロボットの導入は遅々として進んでいません。理由は大きくわけて二つ考えられます。

一つはコスト面。もう一つは介護士の心理的抵抗です。

コスト面からみる、介護ロボットの導入がなかなか進まない理由

まずはコスト面。介護ロボットは一般に普及するにはまだまだ高額なもの。導入するにはそれなりにまとまった金額が必要となります。 コストには時間的なものもあります。

装着型を例にとればよくわかりますが、これまでの動作に加えて、着脱型ロボットを着る動作を加えるというのは、 たとえ動作が楽になるにしても日々業務に追われている介護現場では難しいと思うのが、現場で働く介護士の本音でしょう。

心理的抵抗から見る、介護ロボットの導入がなかなか進まない理由

もう一点の介護士の心理的抵抗はどのような点にあるでしょうか?

これは先ほど挙げた時間的なコストに対するもの(こんなものがなくても上手くできる)だけではありません。 介護ロボットの機能が充実すればするだけ、介護士としての存在意義が疑われる、つまり「仕事をロボットに取られるのではないか」という恐れです。

これはコミュニケーション型ロボットの発達と共に顕著になっているといえるでしょう。

(4)ロボットと人は分業できるか

介護士にとって、介護ロボットの進化は危機感を与えるものとなっているかもしれません。

介護ロボットが登場した当初、ロボットが排泄介助や体位交換などの重労働を担い、 人間が利用者とのコミュニケーションを担う。そういった、明確な分業がされた未来が想定されていました。

しかし、ロボットの導入が徐々に進むと、想定されていた以外に、新しい利点が見えてきます。

人間に代わって重い患者や道具を運ぶとか、排泄物を処理してくれるといった介護士にとっての肉体的負担の軽減だけでなく、ロボットであるから「気を遣わなくて良い」と、 利用者に心理負担を軽減する、という点もあることが見えてきました。

つまり、状況よっては、ロボットが担ったほうが利用者のためになる場合があり、 明確にロボットの役割が限定されなくなってきたように見えます。

(5)ロボットと協力し人はより創造的な介護仕事へ

勿論、現状はまだまだ、ロボットではできないことが多く、部分的な業務で「介護士をサポート」する道具としての役割ですが、今後、技術が進化し、 利用者と積極的に会話をするコミュニケーション型ロボットが活用されてくると、「介護士の代わり」として働くロボットが主流になってくる可能性があります。

しかし、だからといって介護士の仕事が全て奪われてしまうという訳ではありません。利用者の中には、「ロボットだから気を遣わなくて良い」と思う人もいれば、「人と話したい」と思う人もいて、様々です。

ロボットの導入に寄って利用者のニーズに幅広く答えられるようになり、今までの仕事の中で人がやりたくなかったような仕事を担ってくれる存在にも成り得ます。

介護士の役割は、ロボットを上手く活用し、これまでの業務の中でも特に強く創造性の高いニーズのある箇所へ集約されるようになります。それは、レクリエーションの企画や、 利用者とのコミュニケーション、異変の発見であったりするかもしれません。

ロボットの役割、介護士の役割を見出し、利用者への幅広いニーズへ応えることができる、 そんな介護士が必要とされるのではないでしょうか?

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